1-5-1  地域振興と文化継承

　高崎市は小栗上野介関連史跡の環境整備や情報発信を積極的に進め、地域の観光資源として継承を図っている。小栗終焉の地の碑や関連動画・案内も整備され、倉渕から倉賀野への広域周遊の歴史観光の核となっている。

　東善寺では年に1度小栗まつりが開催され、式典と記念講演、演奏、昼市などが行われている。小栗上野介の講演・講話も1時間30分以上の設定で受け付けており、歴史教育の場としても機能している。

1-5-2 学術的・教育的意義

　倉賀野町の歴史は、日本の近世から近代への転換期を物語る貴重な事例として学術的価値を持っている。中山道の宿場制度、河岸の舟運システム、幕末の政治的激動、明治期の交通革命といった複数の歴史層が重層的に存在し、総合的な歴史学習の素材として優れている。

　特に小栗上野介との関係は、個人の政治的活動と地域社会の関わり、物流ネットワークの実態、近代化プロジェクトの地方への影響など、多角的な歴史理解を可能にしている。

　倉賀野町は、宿場町の町割りや街道文化の面影、例幣使道分岐・河岸跡といった複合的交通遺産を一体で体感できる貴重な歴史空間である。舟運と街道が交差した物流のダイナミズムが、幕末の政情と結びついた小栗上野介の伝承を通じて立体的に理解でき、中世城下から江戸宿場、近代以降の変容まで連続する厚い歴史層を持つ魅力的な地域として、今後も多くの人々に愛され続けるであろう。